屋久島は日本一の降水量を記録する場所です。本来ならば雨は憂うつに感じるところですが、濡れた森には命の原点を感じる美しさがあり、神秘的な世界が広がっています。
屋久島登山はたどり着くまでの交通が不便ですが、それだけに素晴らしい体験が待っているのは間違いないでしょう。
今回は屋久島登山をする際の行き方や、必要なものをまとめました。これから島を訪れる方への参考になればと思います。
屋久島への行き方
まずは各地から屋久島へたどり着くための方法です。時刻・料金はすべて2017年5月現在のもので、変更になる場合があります。
飛行機で屋久島へ行く場合
屋久島空港への便は大阪(伊丹)空港・福岡空港・鹿児島空港から出ています。便や時刻は時期によって変更があるので、ご利用の際はその都度チェックしてみてください。
屋久島に向かうときの出発時刻
伊丹空港発 10:05(1時間35分)
福岡空港発 14:15(1時間)
鹿児島空港発 8:45、10:20、11:45、15:25、16:45(35分)
屋久島を出るときの出発時刻
伊丹空港行 17:45(1時間40分)
福岡空港行 12:45(1時間)
鹿児島空港行 9:55、11:25、12:05、15:40、16:25(35分)
1.船で屋久島に行く場合[空港から港まで]
大阪、福岡、鹿児島以外の空港から屋久島へ向かう場合は、鹿児島空港で飛行機を乗り換えるか、鹿児島港から船に乗る方法があります。
空港から港までは距離があるので、リムジンバスを利用します。
場所:鹿児島空港2番乗り場(鹿児島市内行き)
時間:約55分
料金:1250円
高速船ターミナルに行く場合
赤字で書かれた時刻は高速船ターミナル行きのバスなので、これに乗ることをおすすめします。バスを降りるとすぐに高速船乗り場があります。
黒字の時刻のバスに乗る場合は「天文館」で下車し、タクシーまたは徒歩(約15分)で港へ移動します。以下の地図は「天文館」から高速船ターミナルまでの徒歩ルートです。
フェリー屋久島2乗り場へ行く場合
フェリー屋久島2に乗る場合は赤字の時刻のバスに乗り、「高速船ターミナル」バス停で下車したあとさらに5分ほど歩きます。
黒字の時刻のバスに乗った場合は「天文館」バス停で下車し、そのあとマイアミ通りを港方面に直進し、突き当りを右へ曲がった辺りが港です。
はいびすかす乗り場へ行く場合
はいびすかすに乗る場合は黒字の時刻のバスに乗り、天文館から七ツ島一丁目行きのバスに乗車し「谷山港」で下車します。天文館からの発車は15:43です。
谷山港へ行くバスは1日1便となりますので、乗り遅れのないようご注意下さい。
経路:天文館15:43→谷山港16:34
時間:約1時間
料金:片道380円
2.船で屋久島へ行く場合[船の乗り方]
鹿児島港から屋久島までは「高速船トッピー&ロケット」「フェリー屋久島2」「はいびすかす」のいずれかに乗船します。
「高速船トッピー&ロケット」は1日6便(時期によっては7便)、「フェリー屋久島2」と「はいびすかす」は1日1便出ていて、それぞれ料金や使い勝手が違います。
高速船トッピー&ロケット
便数も多く最も利用されているのが高速船です。注意点は屋久島には港が2ヶ所あり、高速船は時間によって着く場所が違います。
必ず宿泊先から近い港へ到着する船を選んでください。宮之浦港行きが1日5便、安房港行きが1日2便です。
時間:経由地や海の状況によって違い約3時間前後
料金:片道8400円・往復15000円(早割あり)
宮之浦港〜安房港間の移動方法
もしも船を間違えてしまったり最終便しか無くなってしまったなど、希望と違う港に着いてしまった場合はバスかタクシーでの移動となります。
バス料金:830円
フェリー屋久島2
1日1便出港しているフェリー屋久島2は高速船に比べて料金が安いので、朝の出港時刻に予定が合わせられる場合はお得です。
到着は宮之浦港のみで、個室貸切や車やバイクの航送も可能です。
時間:[往]鹿児島港発 8:30/[復]宮之浦港発 13:30(約4時間)
料金:片道4900円
はいびすかす
夕方鹿児島港を出港し、種子島にひと晩停泊したあと朝7時に屋久島に到着するプランです。
時間に余裕があり、できるだけコストを抑えたい方にはおすすめです。帰りの便は屋久島を朝出港します。
時間:[往]鹿児島港発18:00→着7:00/[復]宮之浦港発8:10→着14:40
料金:片道3300円
屋久島の交通手段
屋久島の主な交通手段は、バス・レンタカー・タクシーです。
バスを利用する場合
バスは島内の主要スポットまで行くことができますが、本数が少なく終バスが早い場合があるので注意してください。
終バスに乗り遅れると、行き先によっては山の中に取り残されてしまうこともあり得ます。万が一のためにタクシー会社の連絡先を控えておきましょう。
レンタカーを利用する場合
時間を気にせず移動するにはレンタカーが便利です。12時間で3500円から(保険など別途料金かかると思います)借りれるらしく、運転ができる方にはおすすめです。
レンタバイク・サイクルもあるようですが、屋久島は雨が多いのであまりオススメできません。ただ短時間のレンタルが可能なので、目的によって使い分ければ便利でしょう。
タクシーを利用する場合
何より安心なのはタクシーです。コストは少々かかりますが、移動時間が短縮できて迷う心配がありません。
ただ島には流しのタクシーがいないので、空港と港以外から利用する場合は、電話で呼ぶ必要があります。
屋久島に宿泊するには
宿泊は民宿がおすすめ
屋久島は自然豊かな素朴な場所で、人々はすれ違いざまに笑顔で挨拶してくれるような、とても温かみのある島です。
その雰囲気を存分に味わうには、ホテル泊より民宿に泊まるのがおすすめです。宿の人たちは都合が良ければ車で迎えに来てくれるなど、アットホームな対応をしてくれるでしょう。
買い物は早めに済ませること
島のスーパーマーケットは夜8時頃には閉まります。コンビニなど24時間空いてる店はないので、買い物は昼間のうちに済ませましょう。
スナックや居酒屋はあるので、夜飲みに出かけることは可能です。
屋久島登山の行き方
荒川登山道までの道順
屋久島登山の入口である荒川登山道は、一般車両は入れません(12〜2月は可)。屋久杉自然館まで路線バスまたはレンタカーで行き、そのあと登山バスに乗り換えます。
【道順】町を出発→屋久杉自然館(駐車場有)→荒川登山道
バスで荒川登山道へ行く方法
屋久杉自然館行きのバス
宮之浦港を朝4:00始発としたバスが、最初の目的地である屋久杉自然館へ向かいます。空港・安房港にも停車するので、都合の良い場所からご乗車ください。
出発時刻はどの場所から乗っても4時台で、このあとの時刻だと日帰り登山は難しくなります。乗り遅れのないようご注意ください。
路線バス時刻表
路線1
宮之浦港[4:00]→宮之浦港入口[4:01]→宮之浦[4:04]→空港[4:24]→安房港[4:40]→安房[4:42]→屋久杉自然館[4:48]
路線2
宮之浦港入口[4:46]→宮之浦[4:48]→安房→[5:23]→屋久杉自然館[5:29]
料金
宮之浦港[960円]、空港[570円]、安房港[230円]
屋久杉自然館から荒川登山道までのバス
屋久島自然館に着いたら、次は登山バスに乗りかえます。屋久島自然館には駐車場があるので、レンタカーで来ることも可能です。
バスチケットは当日購入できますが、観光案内所か宿泊施設にて事前購入しておくとよりスムーズです。
荒川登山バス時刻表
[往]屋久杉自然館→荒川登山道
5:00、5:20、5:40、6:00、14:00
※8月は4:40発もあります
6月11月の往路の時刻
5:00、5:20、5:40、14:00
[復]荒川登山道→屋久杉自然館
7:00、15:00、15:30、16:00、16:30、17:00、17:30、18:00
6月11月の復路の時刻
7:00、15:00、16:00、16:30、17:00、17:45
料金
往復1380円/片道690円
チケット代には山岳部環境保全協力金の納入分が1000円プラスされるので、往復チケットを1枚購入すると2380円になります。
臨時便が出る時期もあるので、バスの時刻はその都度ご確認ください。荒川登山道へは約40分で到着します。
屋久島登山の服装・持ち物
縄文杉を往復するコースは難しい道ではありません。だけど道のりが長く、岩場などで歩きにくい場所がある分ハードです。
屋久島は降水量日本一であるため、晴れを願うよりも雨を楽しむ気持ちでいるといいでしょう。みずみずしさの中に光る美しい苔や、モヤのかかる幻想的な景色が広がってます。
登山をするときの注意点
お弁当と飲み物を持参して
登山道には売店がないので、お昼ご飯とドリンクはあらかじめ用意してください。往復10時間の道のりに足りるだけの、じゅうぶんな水が必要です。
野生動物に遭遇することが多いですが、食べ物は与えないようにすることと、ゴミは小さなものでも必ず持ち帰りましょう。
トイレは必ず行っておくこと
登山道にはトイレがありますが、数は多く設置されていません。トイレを見つけたときは必ず立ち寄り、そのほか携帯トイレを持参すると安心です。
数ヶ所に携帯トイレ用のブースが用意されているので、目隠しされた状態で済ませることができます。
登山コースでの服装・持ち物
トレッキングシューズは必須
何よりも大事なのはシューズです。登山道は滑りやすく、決して足場がいいわけではありません。
山道で足元が不安定なのは致命的です。登山の際にはスニーカーではなく、必ずトレッキングシューズを履いて楽しみましょう。
雨具を使い分けて
レインコートは雨避けのほかに防寒具としても機能します。ただ夏場であれば防寒は必要なく、私は傘をさしていたため着ることはありませんでした。
だけど使用するしないに関わらず準備はしておきましょう。
傘をささずに屋久島を歩くのであればレインコートは必須ですが、その際は体だけでなくリュックも濡らさないようにしなければいけません。
小ぶりのときはリュック用のレインカバーで間に合いますが、強く降ったり長時間雨にさらされると、肩ベルトから水が浸透して中までびしょ濡れになってしまいます。
それを防ぐためにはリュックごとすっぽり覆う、ポンチョをおすすめします。
傘はできればあった方がいいと思います。登山道には屋根付きの休憩所がないため、雨が降っていたら食事がしにくくなってしまいます。
晴れたときに邪魔にならないよう折りたたみ式がおすすめですが、あまり小さすぎないものを選びましょう。
トレッキングポールはあった方がベスト
トレッキングポールを使用すると、足の負担が軽減されて歩行が楽になります。
屋久島登山では必須とまではいきませんが、10時間に及ぶ長い道のりなので、もちろんあった方がベストです。こちらは体力に合わせて使い分けてください。
そのほかの服装・持ち物
そのほか必要なのは、季節に合った動きやすい服装と帽子です。
補足するならTシャツやインナーは速乾性のものがより機能的で、タイツはケガ防止と疲労軽減、また寒い時期には防寒にも役立ちます。
登山道は日陰が多いので、日焼け止めは出発前に塗っておく程度でいいでしょう。サングラスはご自身で必要だと感じれば準備してください。
屋久島登山の難易度と所要時間
縄文杉へ向かうコースは往復22km、約10時間と言われていますが、人によってはそれ以上かかります。
屋久島登山のポイントは道が難しいかではなく、長い距離を歩くだけの体力があるかどうかです。
むき出しになった木の根や石の上を歩くなど、平坦な道ばかりではありませんが難易度的には優しいと思います。
屋久島登山道の景色
屋久島は命の循環が盛んな場所
朝6時頃からスタートし、しばらく緑に包まれたトロッコ道を進みます。森の中はしっとりとしていて、生まれたばかりの小さな枝が力強く伸びています。
森に入った瞬間に浮かんだのは、地球に生命が誕生するイメージでした。水が豊富な屋久島の森は、生命エネルギーが盛んに循環している様子です。
登山道は広くはないため、横に並んで歩くことはできません。道を外れると危険なので気を付けましょう。
屋久島のパワースポット、ウィルソン株
約4時間くらい歩いたところで推定樹齢3000年のウイルソン株に到着します。ここは屋久島のパワースポットと言われ、その姿はまるで森のおばけが大きく口を開けているみたいです。
400年以上も前に切られたものが、このように残っているというのは屋久島の生命力でしょうか。そしてどのようにして森から巨木を運んだのかも、気になるところです。
ウイルソン株の内部は天井がハート形であることで知られていますが、ハートに見るには位置があるので、ベストなポジションを探してみてください。
一眼レフでハートを写す場合は広角レンズでないと難しいです。スマホの方もみなさんしゃがみこんで撮影されてました。
推定樹齢7200年の縄文杉
ウィルソン株からさらに1時間ほど歩くと、目的地である縄文杉に到着します。推定樹齢7200年と言われる縄文杉は、モヤの中でなんともいえない風格を漂わせています。
登山道は案外距離が長いですが、疲れもすっかり忘れてしまうほどの美しさで、神々しいとは縄文杉にぴったりな言葉だと思います。
もののけ姫の舞台、白谷雲水峡
縄文杉登山コースに続いて人気なのは、豊かな森と水の流れが美しい白谷雲水峡です。
縄文杉からここへ抜けることもできますが、距離があるのと終バスの時間が早いので、慣れない方は別で来た方がいいでしょう。
白谷雲水峡はもののけ姫の舞台となったことで知られていて、奥へ行かずに周辺を散歩するだけでもじゅうぶんに楽しめます。
白谷雲水峡へバスで行く方法
屋久島の路線バスは2社あり、どちらに乗るかで時刻が違います。レンタカーで行く場合は約20台ほどの駐車場があり料金は無料です。
[往路]
まつばんだ交通バス
宮之浦港発 8:15、12:25、13:40
種子島屋久島交通バス
宮之浦港発 8:20、10:40、14:00、15:30
[復路]
まつばんだ交通バス
白谷雲水峡発 9:05、13:00、14:15
種子島屋久島交通バス
白谷雲水峡発 9:00、12:00、14:40、16:10
料金:530円
時間:約30分
宮之浦港以外からバスに乗車することもできます。詳しくは屋久島観光協会HPの路線バスの時刻表をご覧ください。
白谷雲水峡の景色
白谷雲水峡の魅力は、豊かな水の流れとサウンドです。こちらはハイキング気分で楽しめますが、とにかく滑りやすいのでトレッキングシューズだけは履いていた方が良さそうです。
私はトレッキングシューズを置いて、スニーカーで来てしまいましたが、岩の上で滑りそうで怖かったです。サンダルやパンプスではとても歩けません。
水の音は気持ちがよく、聞いてるだけであらゆることを洗い流してくれそうです。
地球は水の惑星であり人の体も半分以上が水ですが、屋久島の森にいるとそれらの全てが共鳴し合う気分にさせられます。
もののけ姫のモデルになった場所ということですが、どんな生き物が住んでいても、何も不思議はありません。
ちなみに屋久島には「もりっぱ」と「もりっぴ」という可愛らしい妖精がいるそうです。
屋久島でのエピソード
島を歩いていたとき、どこから来たの?と話しかけて来たおばあさんが、道端で歌をうたってくれました。
戦争に行った人を待っている悲しい詩らしいのですが、そんな歌もおばあさんも、初めてなのにどこか懐かしい感じがしていました。
近代化されていない島の雰囲気は、遠い記憶にタイムスリップしてしまう不思議な力があるようです。
多くの人が屋久島に惹かれるのは、森の神秘と、子守唄でも聴いているような、安らぎのせいかもしれません。